
7月「戦闘」
文・澄水
日めくりカレンダーは8月12日の日曜日のページになっていた。冷房が効いて冷気を感じるチュテリィストアの2階に流星と槌田はいた。
時計の針は9時を指していた。流星は虹色にシロップを掛けたかき氷にスプーンを刺す。緑の部分だけをすくい上げて口に入れた。
「流星さん、それ最後混ざって凄い味になりますよ」
缶ビールを開けながら槌田は言う。その傍らには既に空になった缶が二本転がっていた。
「いいんですよ。虹色だからオリオールが出そうじゃないですか」
「色も混ざりますよ」
「いいんです。それより槌田さんこそ飲み過ぎでしょう」
「夏はビール片手に甲子園でしょ」
「それでプリキュアの放送がないんですけどね……」
二人の正面のテレビには照りつける日差しの中、汗を流す高校球児たちが映し出されていた。
「そうですけど……プリキュアが無い時こそオリキュア創作したらいいんじゃないですか?」
その時、流星は頭に声が入って来るのを感じた。
『キラ、聞こえますか』
「ちょっと電話してきます」
流星は立ち上がり、部屋を飛び出した。閉っているチュテリィストアの中で話し始めた。
「クレアーレ様……?」
『多分イズトリーヴァムももうすぐ力を取り戻すはずです。もしかしたら何かしてくるかもしれないです』
「そんな……」
『私ももうすぐ復活できるので、それまでオリキュアのみなさんをサポートしてあげてください』
「任せてください」
『あ、オリオールが集まってきましたわ』
天に浮かぶ王宮の中、草原の中央。大人の体となったクレアーレの掌にオリオールの光が集まっていく。虹色の光球はサッカーボールほどの大きさまで膨らんだ。
「いけるかしら?」
クレアーレが手を握ると、その光は球状からクレアーレの身長と同じぐらいの長さの棒状に変化した。
光が消え、黄金に輝く杖が姿を現した。
杖を井戸に向けて振った。
「きっと向こうも……」
井戸の水は荒野を映し出した。そこには白髪の青年の姿があった。それは先日まで少年だった破壊神、イズトリーヴァムだった。身長は190センチ程になっていた。髪も伸び、ボリュームアップしていた。
直径1メートルを越える岩が先端に取り付けられたハンマーを手にしていた。柄には割れた星が描かれていた。
井戸にその巨大なハンマーを向けた。
「クレアーレ、見ているんだろ。もうすぐオリキュアを直々に消してやる」
地上のチュテリィストアでは、流星と鎚田は高校野球の試合を観戦していた。
「そういえばチュテリィストアはお盆休みとかあるんですか?」
流星は首を傾げた。
「それ何ですか? 今週は日曜日以外休みないですよ」
「どういうことですか!」
鎚田はかき氷を奪い取り、頬張った。
「うっ、味は悪くないけどビールとは合わないな……。チューハイにしよう」
そうしている間に試合が終わり、ニュースが始まった。内容はワークデリートが現れたこと、活動が活発化しているというものだった。
