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​12月「緑色とレース」

文・澄水 

 流星の姿は家電量販店にあった。

 店内には赤で強調された値引きのポップが並ぶ。入口には歳末セールと書かれたチラシが貼られていた。

「えっと……ブルーレイレコーダーはっと……」

 人間の姿に変身できるようになった彼は、チュテリィストアの2階で生活していた。その生活の中で、必要と感じたものを都度買いに来ていた。

 ブルーレイレコーダーの価格を見比べながら売り場を歩きまわっていた。種類が多いが違いが分からない、という感想を抱いたかのように首を傾げた。

 ふと視線をレコーダーのコーナーから外すと、CDやブルーレイのコーナーが目に入った。

「ここも創作物がたくさん……」

ふらふらと吸い寄せられるように足を進めた。それは創作物を守る使命故か、唯の興味か、本能かはわからなかった。

流星は並ぶ商品を順番に眺めていく。アニメのコーナーを眺めていた時、流星の動きが止まった。視線の先にはキラキラ☆プリキュアアラモードのブルーレイがあった。

「オリキュアの元になるプリキュアか……」

すぐに手に取り、レジへと向かっていた。

 

 地上では除夜の鐘の108回目の音が響いている頃、天に浮かぶ宮殿の中。時刻に関係なく明るく、聖典の草原。その中央にある井戸の傍でクレアーレは手を合わせて目を閉じた。草をそっと揺らす程のゆるやかな風がクレアーレを中心に起こった。合わせた手を離すと、手の間には、虹色に輝く光の球ができていた。創作の力、オリオールの結晶だ。

 そっと井戸に向けると、結晶は自ら飛び込むように吸い込まれて行った。オリオールの結晶が水に消えてから少し経つと、井戸にはチュテリィストアの二階にいる流星の姿が映った。その姿を覗き込み、安堵の笑みを浮かべるクレアーレ。彼女は地上で働きまわる流星をねぎらうように優しい声色で話しかけた。

「キラ、聞こえますか?」

 

 大阪の住宅街にあるチュテリィストアの玄関にはしめ縄が飾られていた。しかし、店の扉は固く閉められていた。この日は閉店していた。

 この日は1月1日、元旦であった。そのため、店の前の道路には、着物姿の者、破魔矢を持つ者など、初詣帰りと思われる人が行き交っていた。

 店の二階では、流星がキラキラ☆プリキュアアラモードを観ていた。オリキュアの元となる本家のプリキュアを知るべく、ブルーレイを購入してきていた。

「スイーツのプリキュアか……」

一通り観終わって、流星が時計を見ると、時刻は12時を指していた。

「もうお昼か……。人間の姿はお腹空くな……」

そう呟いて、冷蔵庫へと向かおうとした時、彼の頭に直接声が聞こえてきた。

(聞こえますか? 今月1月は『紫』です。それに関連した創作を集めるのです)

「今月は一つだけ……」

自分の腹が鳴っていることに気づいた。

「そうだ。クレアーレ様もお腹が空くに違いない。スイーツの創作を集めればもしかして……」

流星は早速パソコンを起動し、twitterの画面を開いた。

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